~~ 2・カップルごっこ ~~

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 私はまた赤面して翔子の肩を叩いた。 「そうだな。やっぱり可愛いってのが一番だけど、ほっとけない感じとか、真っ直ぐで優しいところとか」  相変わらず照れもしないで、亮は笑顔で翔子に答える。そして、相変わらずそこには何の感情も感じられなかった。言っている言葉は嬉しいものだけど、私には心がないのが分かったから、今度は赤面もしないで淡々と聞いていた。 「ふうん、意外ときちんと見ていたんだ。よし、外出許可」  翔子は冷やかしの表情を消して、私に笑顔を向けた。 「見てみたよ。山本なお」  私達は中庭の芝生の上に座ってお弁当を広げた。 「どうだった?」 「うん・・・。茜は他人の感情だけじゃなくて、体感したことも伝わるの?今朝、西田の腹の痛みを感じて倒れたんだろ?」  私は亮が何を言いたいのかよく分からないまま頷いた。そう言えば、遠藤先生は西田の処置をしてくれたのかな?なんてチラっと思いながら。 「だけどね、出来るだけそれは避けたいから気をつけてはいるの。痛みとか不快感とかそんなものばかりだから、そんなのをまともに受けていたら、その場限りでも精神的に持たないし」  「だよな・・・」  亮は話すのを迷っている感じだった。切ないとか心配とか、そんな感情が流れてきた。 「なおちゃん、何かあったの?」 「うん。あのさ、茜は山本には絶対に近づくな。多分、この春休みかな。辛い目に遭っている。未来は見えなかった・・・と言うより、この夏以降は無かったような気がする」  未来がない・・・?ということは・・・。 「茜が心配していた通り、自殺しようとしているのかもしれない」 「・・・加賀見君が見た未来って、変えられないの?」  私は身体が震えていくのが分かった。 「変えられるよ。だけど、山本のことは正直言ってどうしたらいいのか、俺には分からないんだ」
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