●プロローグ●

2/2
83人が本棚に入れています
本棚に追加
/115ページ
「別に、そんなの求めてない」  美樹の好奇心や新生活への期待がよく伝わってくる。美樹は裏表がない明るい性格だから好きだった。  高校に入学してまだ半月だけど、女子はあっという間にクラスの中でグループが出来る。  私もクラスでは何となく気が合う子二人と一緒に行動をしている、ごく普通の女子なのだけど・・・・・・。私には小さい頃から人には言ってはいけない、と親から言われてきた秘密がある。  昔から私は感受性の強い子で、赤ちゃんの頃は母が落ち込んでいたり機嫌が悪かったりすると、泣き止まなくなって悪循環で母は育児ノイローゼになったとか。もう少し大きくなったら、周りにいる人の感情に左右されて、自分の意思とは関係なく泣いたり笑ったりしているように見えて、両親は心配してあちこち病院に連れて行っては異常が無く、相変わらず私は親の悩みの種だったようだ。  成長して会話が出来るようになった頃、私は人の気持ちを代弁するようになって、思っていることが伝わっているんだ、と分かったという。  それからは、人の心を見ないように、それはプライバシーだから、例え分かってしまっても知らん顔して絶対に口にしてはいけない、ということを厳しく教えられた。  厳密に言えば、私は人の心の中を読んでいるわけではなくて、人の感情がそのまんま伝わってくる。言葉で聞こえるのではなく、感情や感覚的な気持ちがドッと押し寄せてくる感じ。だから、泣いている人の傍に行ってしまうと一緒に泣いてしまうし、怒っている人の傍に行くと怒りの感情をストレートに感じて嫌な思いをする。酷い時は激痛や吐き気なんかの辛い感覚ももらってしまう。楽しいとか嬉しいとかプラスの気持ちも流れてくるけど、影響力が強いのはやっぱり負の感情だった。  ニコニコして心では怒ったり怨んだりする人が一番恐い・・・。だけど、人間だからそれは誰にでも少なからずあることだろうし、私も好きで人の感情を知っているわけではないけれど、周りの人だって誰かに知られたくない感情だと知っているから、それは絶対に口にしないように、私が感情を感じ取っていることはバレないように、と日々努めている。  とは言え、人の感情に敏感なんだと勘付かれると、大抵の人は離れてしまう。  中学の時に付き合っていた佐伯も、ハッキリとカミングアウトはしなかったけれど、何となく気持ちが分かり過ぎることが嫌だったようだ・・・。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!