●第1章● ~~ 1・気になる同級生 ~~

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●第1章● ~~ 1・気になる同級生 ~~

「茜ってば、また見てるぅ」  休み時間に窓の外を見ていると、酒井百合が特徴的なアニメ声のブリッコ口調で私の肩を突付いてきた。  こんな雨の日でも綺麗に髪を巻いて、潤んだ瞳でこちらを見てくる百合は同性から見ても可愛かった。ブリッコで裏表があると思われがちだけれど、百合は本当に素直な感情しか持っていない。 「か・が・み・君。茜のタイプなの?」  百合は私の腕に手を絡ませて、からかうようにそう言った。  窓の向こうに見える体育館に入る階段で、クラスメートの男子が数人で座り込んでジュースを飲んでいた。 「ふふっ。どうかな」  出会いなんて求めていない、というのは決して嘘ではないのだけど、つい目で追ってしまう男子がいた。  階段でジュースを飲んで喋っている男子の中で、やや小柄だけど目が大きくて愛嬌のある表情の加賀見亮。彼が視界に入ると、どうしても目で追ってしまう。 「って言うか、あいつって茜の男版みたいだよね」  今度は高木翔子に百合とは反対側の腕を引っ張られた。翔子は細身で長身のちょっと口が悪い姉御肌。髪は跳ねるのが面倒だからと、小学生の頃からずっとショートだとか。なんでもマメな百合とは正反対だけど、心に表裏がないのは百合と同じだった。 「小柄で目がおっきくて、いっつもニコニコしている感じが似ている。髪もサラサラだし」  翔子が私のセミロングの髪をくしゃくしゃっと触ったから、私は顔をしかめた。 「それ、やめて」 「茜って実はナルシスト?」  翔子はニヤニヤして、三階の窓から身を乗り出して亮を見た。亮が気付いて上を見たから、私は思わず窓から離れた。  でも、百合はにっこり笑って亮に向かって手を振って、翔子もニヤニヤしたまま見続けていた。 「ちょっと、二人とも何やっているの?」  私は二人の制服の袖を引っ張った。 「百合が手を振ると、加賀見以外の男子が大注目だよ」  翔子は可笑しそうに笑っていた。思わず私も窓の外に視線を戻すと、亮の周りにいた男子達が満面の笑みで力いっぱい百合に手を振り返していた。
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