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「俺さ、触れると見えちゃうんだよな、色々と・・・」
「えっ?」
私は焦って咄嗟に両手をクロスさせて腕で胸を押さえた。見えちゃうって・・・もしかしたら、この人は透視能力があるのかもしれない!
そんな私を見て、亮は思わず大笑いした。
「いや、違うって」
「ち、違うの・・・?」
私はホッとしたけど、普通は透視能力があるなんて考えないな、と思った。自分が感情を直で分かるから、他にも何か人には言えないものを持っている人がいればいいという願望が出てしまったんだ。
亮は兄に似ていたから、特に何か人と違うものを持っていたらいい、と思ってしまったのかもしれない。兄は私の唯一の理解者だったから。
「そっちじゃないけど・・・普通は見えないものが見えるんだ」
思いがけず、亮の口からそんな言葉が出てきた。
「どんな・・・?」
「過去とか、未来とか」
私は亮の顔を暫く見ていた。信じてもらえるかどうか不安に思っているようでもあるけれど、私に対する親近感も感じた。私が持っている力も知っているのだろうか。
「肩がぶつかった時に、お兄ちゃんが見えたの?」
「・・・うん。俺に似ていた。だから、時々俺のこと見ているんだろ?」
私はまた赤面して俯いて、「ごめんね」と言った。
「別に謝ることじゃないよ。仲が良かったんだろ、兄ちゃんと」
亮はさっきの無表情とはうって変わって、いつも見ていた人懐こい笑顔を私に向けた。
「うん。ブラコンレベルで大好きだったんだ」
そう言って私も笑うと、亮の照れたような感情が流れてきて、私も照れそうになったからポーカーフェイスを心がけた。
「矢川は・・・人の心が読めるのか?」
亮がまた真顔になって私を見ていた。それを聞くのは勇気がいるだろうと思った。だって、自分の心も読まれているかもしれないんだから。
「・・・どうして、そう思うの?」
私は少し前から兄に似ている亮に気付いて目で追うようになったけど、実際に話すのは初めてだった。そんな亮に気付かれてしまうなんて・・・。
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