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「それもぶつかった時に分かった。過去が見えた時に」
亮の真っ直ぐな感情が伝わってきた。
「そっか。でも心は読めないから安心して。ただ、人の感情が流れるように入ってくるの。加賀見君みたいに触れなければ大丈夫、っていう秘策も無いから、色んな人の感情がダダ漏れ状態で入ってくる・・・」
私は初めて家族以外の人に打ち明けた。勘付いていたとは言え、亮の反応が恐くなって下を向いて顔が見られなくなった。
「そっか。だから、いつも松山の授業ではキツそうなんだな。あいつ、すげえヒステリーだもんな」
亮の反応が普通すぎて、思わず笑ってしまった。
「何がおかしいの?」
「だって、こんな会話が普通に出来るって、なんか変」
「確かに」
亮も笑顔になって暫く二人で笑っていた。
「でさ、本題なんだけど」
今までの話はまだ序盤だったのだ、と分かったのは亮のその言葉からだった。
「心は読めなくても感情が分かるなら、大体言いたいことも分かるってことだよな?」
「具体的な言葉は分からないんだけど、感覚的に思っていることとか、言っていることと思っていることの矛盾とかは分かる。どんな気持ちでいるのかっていうのも」
私の話を聞いて亮は少しの間、顎に手を当てて考え込んでいた。
「隣のクラスに西田って奴がいるの知っている?」
私は首を横に振った。男子なのか女子なのかも分からなかった。
「俺も知らない奴なんだけど、やっぱりこの前間違って触れちゃったんだ。そしたら・・・そいつの過去と未来が見えて・・・」
「待って」
私は思わず遮った。
「それってプライバシーでしょ?私、知りたくない。ただでさえ人の感情が流れてきて、嫌でもプライバシーを侵害しているんだもん」
「そうだよな・・・」
亮のどうしようもない思いが流れてきた。亮も私と同じ気持ちだけど、どうしても私に協力して欲しいことがあるようだった。だけど、私がハッキリと拒否したから、亮は何も言えなくなってしまったのが分かった。
「ごめんね・・・加賀見君のプライバシーも侵害しちゃったけど・・・何かあるなら聞くよ」
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