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仕方なくもう一度だけ駐車場内をうろつくと、外れの方ではあるが、幸いにも一つスペースが空いたので、俺はそこに車を停めた。ただ、やはり店内から離れた位置なので、カートを使用しても荷物の持ち運びが面倒で、身障者用に停めればよかったとひたすらに思っていた。…駐車場を出るまでは。
立体駐車場から外に出ると、かなり小降りになった雨の中に救急車のサイレンが響き渡っていた。
平面駐車場の片隅に赤いランプが停まるどうやら事故があったらしい。
その現場をチラと見た瞬間、俺は目を疑った。
何をどうしたのかは判らないが、フロント部分がぐちゃぐちゃに潰れた車が停まっている。その車は、さっき、俺を押しのけるように身障者用スペースに停められたあの車だったのだ。
同車種の車はいくらでもあるから、見間違いかもと思ったが、雨の中を搬送されていく怪我人の服装も、さっき見かけた車の持ち主と一致していた。
このニュースは、当時の夕方に地方局のテレビニュースで流され、新聞にも小さく取り上げられていた。それらでは詳細は判らなかったが、目撃者の証言が後日噂になって俺の耳にも入って来た。
その目撃証言によると、事故を起こした車は、信じがたいスピードで立体駐車場から下りてきて、そのまま、平面駐車場の植え込みフェンスに激突したらしい。
搬送された運転手は、命に別状こそなかったが、両足を骨折して、今は入院中だとか。
どうやらあの噂は本当だったみたいだな。俺、あそこに駐車しなくてよかった。
そう思うのと同時にもう一つ、例えおかしな噂がなくても、やっぱりああいう専用スペースは、本来そこを使う必要がない奴が利用するモンじゃないなとも思った。
多少不便だとしても、社会のルールやマナーは守るモンだよな。うっかり破りそうになった時は、この件を思い出すことにしよう。
身体障碍者用スペース…完
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