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「あんたのその手に持ってる刀って……」
桜色の口から愕然とした声を出す瑞枝。
これからどんな説教が待っているのか。
そもそも説教だけで済むのだろうか?
やっぱり裏の仕事的なのをやらされるのか?
やーさんや警察のお世話にはなりたくないよう!
「いや、あの、その……
興味本意で抜こうとしたら、簡単にポッキリいったといいますか……はい」
徐々に声が小さくなっていくのが自分でもわかる。
最後の方は蚊が鳴くような音量になっていたことだろう。
「少しここで待っていなさい灯佳。
またすぐに戻ってくるから」
「あの!
通報するのは待って欲しい!
何でもする!何でもするから警察だけは勘弁してくれないか!?」
「は? 別に110番なんてしないから大丈夫よ。
ただ今なんでもするって言ったわよね?
その言葉きちんと覚えておきなさいよ」
「俺にできることなら何でもするよ!
それで瑞枝のためになるのなら!」
「はいはい。
まぁ、あまり期待しないでおくわ」
一瞬だけ憂いを秘めているような表情を見せた瑞枝。
「どうしてあんたが選ばれてしまったのかしらね……」
本当は心にしまっておくべき言葉だったのだろう。
コップから溢れ落ちた一粒の水滴のように、小さく呟いた。
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