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「いっつー……」
咄嗟に受け身は取ったものの、痛いものは痛い。
折れた刀の上に倒れなかっただけでも僥倖か。
両目を手のひらで覆い、恐怖と羞恥を隠す。
一瞬ヒヤリとさせられたもんな。
「大丈夫か?
いきなり倒れるからびっくりしたぞ」
「あ、ああ。
これくらい大丈夫です……?」
手を顔からどかし、視界をクリアにする。
すると目の前に流麗な銀色の髪の少女がいた。
白を基調とした着物を身に纏っている。
フワフワと浮いているのは気のせい。うん、気のせいだ。
きっと受け身がきちんと取れていなくて、打ち所が悪かっただけ。
幽霊なんていない。幽霊なんていない。
「ボーっとしているが、本当に平気か?」
「大丈夫ですよ。
ちょっと幻覚が見えただけですから」
言いながら上半身を起こし、座る形になる。
少女も俺の真上から移動し、浮いたまま再び目の前にやってくる。
「あー、でも少し疲れていますね。
なんだかあなたが空中に浮いているような幻覚が見えます」
「気のせいではない。
私は実際に宙に浮いておる」
「ははは。またご冗談を。
漫画やアニメじゃないんですから、そろそろネタばらしをして下さいよ」
「冗談ではない。
私はご主人が折った刀“月詠”の精霊だ」
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