第4章

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矢は木の上から飛んできたがーー 矢が飛んできた元は三方向。 的確に俺の頭部を全て狙っていたな。 それが指すものは、俺に対する明確な殺意。 ーーグレイと敵対する勢力か? ゆっくりと、紅雪を抜刀する。 静寂な森に美しい刃音だけが響く。 「何が目的でこの森に来た!人間!」 透き通るような女性の声が不意に俺の鼓膜を揺らす。 人間、というところに憎悪を感じ取らせるような言い方。 俺に対する敵意ではなく、人間という事実に対する敵意、か。 「案ずるな、何もお前らをどうこうしようというわけじゃない。 ただ、人間の世界に少し居づらくなったのでな」 自身の口から紡がれる自虐的な言葉に、自分自身でも少し戸惑った。
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