昔の人・今の人

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 あー、太郎君可哀相、この過激な二人によく文句も言わないで 言いなりに従ったと思う千春だった。 「このパンツっていうの何か落ち着かない、居心地悪い」  太郎の精一杯の抵抗だった。 「それでね、私達が下着買おうとしたら、女までふんどしするのかって、 大きな声で言っちゃって、かなり恥ずかしかったわ、 Tバック説明しても理解してもらえなかったわ」  すごい感覚だわ! と道子が言った。  道子とみどりは太郎の着替えを済ませ、いつもの様に ハンバーガーショップに太郎を連れて行った。  太郎は初めて食べるハンバーガーに衝撃を受けた。 「で、太郎君、泣きそうな顔になって言うのよ、これを真理に食べさせたいって、 彼女いるんじゃない、ガッカリだわ感じ良かったのに、 ちょっと拍子抜け」  みどりの言葉に反応して太郎は新しく買ったナップザックから 数個のハンバーガを取り出して千春に手渡した。 「今真理さんいないから私が代わりに食べたげるわね、いただきます、 そのカバンもいいわ、ほかに何が入ってるの?」 「おらの着物とふんどし」  思わず千春の食べる手が止まった。 道子とみどりはケラケラ笑っていたが口の中のハンバーガーが 物凄く美味しく感じた。パクパク食べながら感激で泣きそうになったのだ。  千春は心の中で真理ちゃん美味しい? と呟いた。  数日後、千春は退院した。  行くところが無いという太郎も家に連れて来た。  ただただ驚く両親に千春は懸命に家においてほしいと頼んだ。 「それが本当だったとしたら、うちも昔からある家だし、 太郎君や真理ちゃんとも多少関係があるかもしれないな、うん、 太郎君を邪険には出来ないよ、それと白神様っていうのは 昔ばあちゃんから聞いた事があるんだよ、 だから太郎君を信用したんだ」  父慶一が思い出すように言った。  太郎は毎日朝早くから畑仕事に精を出した。 みるみるうちに立派な野菜畑になった。  千春は精神的ショックからあまり外出しなくなり家でゴロゴロしていた。 頭の中では自分の将来の事が目まぐるしく回転していた。             
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