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今回の場合は千春の恐怖の叫びがシロを呼び出したのだ。
千春を守ると同時に千春の怒りと呪いが込められていた。
シロの咬み痕から強力な細菌が発生するだろう、下手をすれば壊疽になる。
手足の場合は切断で済むかもしれないが西沢の場合は
肩口も咬まれたので命が危ないと説明した。
「って事は・・・ 私の怒りに応じてシロが攻撃したって事? そうかもしれない、
あんな卑劣な奴ら絶対許さないと思ったから、
シロが鼻で私の身体に触ったけど大丈夫? バイ菌」
「何言ってんだ千春ちゃん、守り神が危険な訳ないよ、悪い奴らにだけだよ、
舐められても、千春ちゃんがシロに噛んでも大丈夫」
安心させる太郎だった。
その後、文化祭も無事に終わり、三年生は就職に、受験に
忙しい日々に追われた。
尤も既に就職が決まっている生徒は余裕の表情だった。
千春も道子もみどりも受験勉強に追われ大変だった。
みどりは看護師志望、道子は教師を志望していた。
千春は特に希望はなく兎に角なんでもいいから大学に入れば
何とかなると考えていた。
「何で百姓したい人がいないんだ? おら分からない、土地も畑も
あるのに、おらこれしか知らないしこれが一番楽しいと思う」
太郎には一次産業が若者に敬遠されている事が理解出来なかった。
「そうよね、今の若い連中はきつい、汚い、ダサい仕事は嫌うもんね、
でも経営は難しいわよ、苦しいし、死ぬとこまではいかないけどね、
皆楽して格好良く生きたいんだ」
家で畑仕事を手伝っている千春は野菜作り、農業の楽しさは
僅かに理解していた。
しかし自分の生涯の仕事にするとは考えられなかった。
ある日、みどりが千春と道子を呼んで興奮した表情で話した。
「岩田高校の西沢ね、入院したらしいよ、感染症とかなんとか
言ってたけど悪いばい菌が身体に入ったんだって、かなり重症らしいよ、
話じゃ壊疽かもしれないって、他の二人もばい菌が入った手足の部分
切断して学校辞めたって、隣の組の男子が話してたわ」
ほんとに、と驚いて見せた千春だったが太郎の言った通りの
結果に驚いた。
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