昔の人・今の人

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「それ、いいわね、夏休みにみんなでキャンプに行こうよ」  千春も喜んだ。  入学してから落ち込む時期の五月病になることもなく、 二人は勉強に、サークル活動に励んだ。  道子とみどり達には定期的に会い、それぞれの情報交換をした。  千春達三人は夏休みのキャンプの計画で盛り上がっていた。 「私の都合に合わせてよお願い、看護の場合は夏休みでも 当番や実習や仕事が一杯あるんだから」  羨ましそうに訴えるみどりだった。 そういえばボーイッシュで細身のみどりがもっと細くなったようだ。  日程を調整して8月の14日から17日の三泊四日、 信州方面に行く事に決まった。  計画に参加出来ない太郎はどこでもよかった。久々に 自然と触れ合う機会を得て大喜びだった。 「女三人なんだから太郎君、仕事多いわよ、 山登って疲れたら荷物持ちだからね」  と言う道子に、 「それだったら道っちゃん、彼氏連れて来ればいいのに、いたらね」  言った太郎は三人に強く叱られた。 「楽しみだわ、皆でキャンプなんて、でも丁度お盆の日と重なるから 人が多いかもね、先祖の霊を敬う日だし」  神妙な調子でチラッと太郎を見た千春だったが、 太郎はみどりと道子とキ ャンプの話に盛り上がっていた。  キャンプ当日、  四人は上高地行きのバスの中にいた。 バスの車窓から映る山や渓谷に魅了された三人は大はしゃぎだった。 しかし太郎は浮かない顔をしていた。  夏休み前、前期試験も無事終わった、太郎は千春に叱咤激励 されながら必死になって勉強した。 「太郎君、サボらないで頑張ってよ、もし試験落としたら追試だからね、 そうなったらキャンプ行けないよ、追試がない科目は来年再履修だし、 単位落としたらここ追い出すからね」  厳しい言葉に耐えながら太郎は頑張ったが、 外国語はどうしても難しかった。何で外国語なんかと 試験に臨んだが分からなかった。  隣の席で試験を受けていた西野勝が自分の答案を そっと太郎の方へ寄せてきた。  太郎は西野に感謝しながら答えを写した。  西野は優秀な学生だったので太郎は辛うじて単位を取る事ができた。  前期試験の第一関門を何とかクリアした千春と太郎だが、 太郎にはもう一つの難関が出現した。               
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