昔の人・今の人

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 素人の観光客が利用する所なので満員だった。  ぎっしりとテントが立ち並びまるで都会の住宅街と同じだった。  太郎は少々閉口していたが娘三人は結構楽しんでいた。  定番のカレーライスを食べ、夜にもなるとあちこちから 若者が騒ぎ奇声を上げていた。 「ちょっと散歩してくるね」  好奇心旺盛な三人は楽しそうに出かけて行った。 「ま、しょうがないよな、ほかの連中楽しそうにしてるもんな」  そう呟いて太郎は留守番役を買って出た。  かすかに千春の声が聞こえて太郎はハッと目を覚ました。 いつの間にか居眠りしていたらしい、三人の娘の声と共に 数人の男の声が聞こえた。注意して聞くと男が千春に言い寄っていて 彼女達は嫌がっているようだった。 「いいじゃないか、一晩中楽しもうよ」 「ダメよ、私達もう寝るから」  いくら断っても酔ったしつこい男の力にはかなわなかった。 男達は構わず付いて来た。 「ここが君達のテントかい、俺達と一晩過ごそうよ」  一人の男が勢いよくテントを開けた瞬間ウッ! と呻いて 何事もなかったように足早に引き返して行った。  千春がテントの中を覗くと太郎が眠気眼で頭をもたげていた。 「あ、お帰り、おら寝てたみたいだ」  千春と道子、みどりは安心してテントの中で横になった。  太郎の手にはテントの中で男達を待ち構えていた シロの毛が数本残っていた。  二日目は志賀高原、三日目は発哺温泉でキャンプした。  観光地のキャンプ場がよかったのだろう、 四人は大勢のキャンプ仲間と知り合って楽しんだ。 「S女子大の百合子ちゃん、おら気に入ったみたいだ、おらと話が合ってさ、 東京で会おうかなんて話が盛り上がった」  嬉しそうに話す太郎に三人が噛み付いた。 「いつよ、いつそんな話してたのよ」  千春が言うと、 「何よあんな女、キモい男ぞろぞろ連れてサ、ダメよ太郎君、 あんた女を見る目が全然無いね、男をもてあそぶ 典型的なタイプだよ、千春、ちゃんと監視しないとダメだよ」  一瞬にして却下された。 「私もいい男がいて結構いい雰囲気になったのよ、 でも何でかそれ以上進行しなかったわ」
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