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みどりが言うと千春と道子も私もと同意した。
首を傾ける三人だが、彼女達の背後で悪い男から
三人を守るシロには気付かなかったようだ。
旅行の最終日、四人は長野の善光寺にいた。
重厚な大きな建築様式で大きな牛の像が印象的だった。
「凄く立派なお寺だね、おら感激した」
感動を隠せない太郎だった。
境内では大勢の観光客が線香の煙を自分の体に擦り付けていた。
四人も行って線香の煙をつけた。
みどりは痩せた胸にも付けていた。
寺の中を拝観し、胎内巡りをした。
本堂の中央に地下道があり明かりは無く真っ暗である、
中ほどに仏像のシンボルがあり、それに触れるとご利益があるのだ。
四人は胎内に入った。
中に入ると本当に真っ暗闇だった。
千春は真の暗闇に恐怖心さえ覚えたが、太郎や道子、みどりが
一緒の事と大勢の観光客もいる事から道子とみどりの背中に
掴まりながら進んで行った。
その前の道子とみどりは太郎にしがみ付いていた。
そのまま暫く歩いていると観光客のあった、あった、これだよ
という声が聞こえた。千春も手を伸ばし触った。
ああ、よかったと思った時、三人を見失った。後ろの観光客に
押されながら太郎君と小声で呼んだ。
すると太郎の手が触れ千春は安心して太郎の手を握った。
出口に近付いた時二人の手が離れた。先の方で薄っすらと
出口の明かりが見えてきたのでそのまま出口に進みホッと
したところで横の太郎を見ようとした千春だが太郎はいなかった。
あれっ、と後ろを振り返っても姿は無かった。
「千春、なにきょろきょろしてんのよ」
道子とみどりがケラケラ笑っていた、その横で太郎も笑っていた。
「太郎君私と一緒じゃなかったの?」
「道っちゃんとみどりちゃんに早く出ようって引っ張られたんだよ」
楽しそうに言う太郎に、じゃ、私と手を繋いでいた人は誰なの?
と辺りを見回したが大勢の人で分かる筈もなかった。
「もしかしてそれ、痴漢じゃない? 真っ暗だから誰が触ったか分からないし、
出口に近付いたら逃げればいいんだし、とんだご利益ね千春」
いい男だったら悔しいけどと笑いながらみどりが言った。
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