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見てみる? 得意げに言うみどりだった。
みどりから手渡されたコピーを三人は見た、その時、
太郎があっと叫んだ。千春は太郎を見た。
「知ってる人なの? 太郎君、」
太郎の意外な反応にみどりが聞いた。
「たぶん真理の血縁者だと思う、名前のレイでおら気が付いた」
名前は片仮名でレイ、年齢は24歳、職業なし、
住所不定で出身地の住所が載っていた。
レイの死因は心不全、男児一人を出産したが住所は不明だった。
膨大な資料の中、住所不明、浮浪者の中からみどりが見付けだしたのだ。
「太郎君、何回か聞いたけどその真理っていう人、
まだ一度も会ったことないし、彼女でしょその子、会ってるの?
本当にいるの? なんかおかしいような気がする」
道子の疑問はみどりも同じだった。
「真理さんはね、今外国で勉強してていつ戻って来れれるか分からない
んだって、私は一度会った事があるわ、綺麗な人だった」
本当に綺麗な人だったの! 少々がっかりする二人だったが、
太郎は千春の発言に感謝した。
「みどりちゃん本当にありがとう、真理はこの人の消息が分からない事で
心配してたんだ、男の子もいるって、真理も喜ぶと思う、
おら嬉しくて・・・ おらみどりちゃんが好きになっちゃった」
「ホント? じゃあ一日デートしようよ、千春の許可があればね」
千春を見るみどりに笑顔で頷く千春だった。
道子とみどりが帰り千春と太郎が話し合っていた。
特に千春は沈鬱な表情だった。みどりが偶然見付けたカルテの女性は
真理が自殺する2年前に身売りされた姉の玲だったからだ。
「この時代の私の田舎の人達は本当に苦しんでいたのね、
なんか悲しくてやりきれない気分、」
「あの頃のおら達は人間じゃなかった、それも気付かなかった」
姉のカルテに死亡した理由は心不全、その他全身打撲、
骨折の痕跡が肋骨に数箇所、腕にもあると記されていた。
「売春させられて、折檻されて、逃げ出そうとしたんだろうな、
生まれた男の子も取り上げられて、仕事させられたんだ」
涙を流しながら千春が言った。
「玲姉ちゃんはきっと田舎に帰って来るからって真理に約束して
励ましたんだ」
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