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千春は幼い頃から利発で活発な子供だった。
過疎化が進む小学校、中学校ですくすく育った。
高校になるとバスで隣町の高校に通う事になった。
千春の村の生徒は殆ど隣町の高校に進学した。
隣町の高校とはいえ地方の学校は小さいものだった。
一学年に二クラスで、一クラス30人ずつ、地方から来た生徒に比べ
町の生徒が多かった。
小、中と同じ学校で顔見知りの生徒達は他方から来た生徒を
からかった、いじめだった。
小さな学校でいじめがあるとなかなか修正できない。
多人数の学校なら予想外の能力を持った生徒が現れたり、
問題を解決しようという大勢の意見が表に出て力になる。しかし、
少人数の場合は強い者は絶対的だった。
この学校でも村から新たにやって来た者はよそ者だった。
千春は町の生徒からの冷たい扱いもさほど気にならなかった。
そんなもんだと思っていた。
二年の時、男子二人が学校を辞めた。
「家の仕事手伝わないと、じいちゃんもばあちゃんもあまり無理して
働けないし、辞めるしかないよ学校」
無理して笑った顔が千春には印象的だった。
中の良かった女子生徒も一人辞めた。
「こんなとこでバカにされて虐められて・・・ 何になるの、
何にもならないよ、私、都会行って仕事して好きな事やって
楽し暮らすんだ、千春も行こうよ一緒に」
勿論千春も都会の華やかな暮らしには憧れていた。
しかし、何としても高校は卒業したかった。
一生懸命勉強して大学に進学する事を夢見ていた。
三年の夏休み、千春は一人で裏山のふもとの畑で野菜作りに励んでいた。
野菜を一杯作れば家の食糧のかなりの部分がまかなえる。
そして経済的だ、何より自分で作った野菜は美味しかった。
千春は野菜作りが好きだった。
「おい、千春!」
荒々しい男の声でびっくりして振り返った。
クラスの不良グループ四人が畑を踏み荒らしながら近付いて来た。
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