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桃は目を丸くした。
「へー。そんな古い本なの?」
「うん。このシリーズ大好きだった」
カウンターの向こう側から乗り出して、表紙をまじまじと見る。
「じゃあママ、桃が読むまで犯人言わないでよ」
いたずらっぽく微笑んだ。
「ママね、それ犯人知らないのよ。図書館に返す日がきて最後まで読めなかったの」
困ったように言うと、桃はいいこと思いついた、と言いたげに目を見開いた。
「じゃ、それ先にママに貸してあげるよ。途中からだったらすぐ読めるでしょ」
美紗はとまどった。
――ここで、私は桃になにか言うべきではないのだろうか。この本は――
「ありがと。じゃあ、順番こね」
美紗は、笑顔でそう返していた。
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