ハロー、アゲイン

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『おかえり』 ふと、誰かにそう言われた気がした。 『今はもう怖くないでしょ、一緒に行きましょ』 あこがれの彼女が、美紗の手をとってくれる。はちみつ色のポニーテールが大きく揺れている。 『今度こそ、絶対犯人をつかまえましょうね』 敬語で話すのは、記録係の眼鏡くん。  鼻くんは無言。彼は寡黙なのだ。でも口元が笑ってくれている。 『もたもたすんな。行くぞ、最後まで』 団長はいつも偉そう。  美紗は胸がいっぱいになった。彼らはここで、いつでも私を待っていてくれた。  そして今からでも冒険はできる。こんどこそ、私は大団円にたどりつく。  そして桃と、この本の話をするだろう。 『ただいま』 心の中でつぶやいた。 ――私、役に立つ本、偉くなれる本、自分を肯定してくれる本ばっかり探してたんだ。でも今はちょっとだけ、立派な母親をめざすのはお休みしてみようか。  美紗は胸のたかなりを感じながら、本を閉じた。今夜は、ぼんやりドラマを見るのはやめて、この本を読もう。  九歳のときに出会った彼らと一緒に、一度はあきらめた、あの謎解きの旅に出よう。 了
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