ハロー、アゲイン

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「ママ、今年から宿題に自由研究もやるんだって」 「えっ模造紙に書くやつ?」 思わず大きな声が出た。  夏休みの自由研究で優秀だったものは、小学校の学習発表の時に展示される。美紗も見たことがある。高学年の子供たちが理科の実験結果や、地域の歴史などを調べて書いたものが多かった。  今年は、あれに取り組まなければならないのか。  なんだかそれだけで、プレッシャーのようなものを感じた。  美紗にとってまだ桃は、ほんのちょっと前まで幼稚園児だったような気がするのだ。  半畳ほどもある大きな模造紙に、タイトルだの、見出しだの、表だの、工夫して誰にでも読める文字で書く、ということはずいぶんハードルが高いように思えた。 ――これは親が頑張らなくちゃ。  そう思う一方で、美紗は内心ため息をつく。子育てとはこんなものだっただろうか。こんなにいつもいつも、子供がつまずかないよう手助けしなければならないものなのだろうか。  それでも。  もし今年の学習発表会で、同学年の子が立派なものを出していたら、自分が呵責を感じるのではないかと、美紗は少し怖くなる。
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