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遠くで銃声が聞こえた。テルはうまく位置についただろうか。ジャクヤはいう。
「敵の気を読むのは、でたらめに鋭くなった。今もほら索敵のローラーがじりじりとこちらに近づいている。だいぶ気がゆるんでるみたいだな。あとはネズミを三匹捜しだして、仕留めれば演習も終わりだ。みんなベッドが恋しくなっているようだ」
タツオは質問した。困惑と怒りが胸の奥にある。
「なぜ、子どもを戦わせる?」
「天童家最強の武器をつくるためだ。ただ修行をするだけでは駄目なんだ。死線を越えなければ、呪法は伸びない。才能のある子どもを見つける試験みたいなものだね」
「ワタルくんがいっていたよね。ジャクヤは天童家の長い歴史で見ても、100年にひとりの才能があるって」
ジャクヤはため息をつくように笑った。遠くで兵士が波のように動く気配が、タツオにも感じられた。ジャクヤにはもっと見えているのだろうか。
「あんなものはあてにならない。ぼくよりふたつ下にも抜群の才能をもつ女の子がいたよ。あの子も100年にひとりといわれていた。隠密行と暗殺の達人だった。16歳までに12人の子どもを殺している。幼馴染(おさななじ)みだった」
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