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ふつふつと泡があがってくる。
澄んだ塩水の中。泥の中からふつふつと泡があがってきていた。
生物がいる証拠。この中にいるのはなんだろうか。
そう思いつつも掘り返す気にはなれず、僕はじっと上がってくる泡を眺めていた。
「――ねえ」不意に声が降った。
ゆっくりと顔をあげる。
そこには君がいた。ぬれた長い黒髪をまとめ、化粧をしている。不快感を与えない程度に華やかだ。中に来ている水着が透ける薄手のTシャツから覗くほどよく細い腕も、短いパンツから生える足も程よく日に焼けている。
図書館にこもりきりの僕とは大違いだ。
僕が反応もせずに君を見つめていると、君は僕の足元を指さした。
「デニム浸かってるけど、いいの?」
「……え?」
指摘に視線を落とす。泡を見はじめた頃より、海面が迫っている気がした。きちんと確認してみると、海水がいつの間にかふくらはぎまで到達している。
慌てて立ち上がる。
「あーあ。もも裏までぬれてるよ」
立ち上がった瞬間にぬれた布が張り付いたため、指摘される前に把握していた。僕は頷いた。
「これは……よくない」
「やっぱり?」
顔を見合わせた僕と君の後ろ、「結局話しかけてるよ。よせって言ったのに」男たちが呆れたような声を出している。
――
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