水の中の君と僕。

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―― 「全部沈んじゃえばいい」  唐突に君がそういうものだから、僕はしばし瞬きを繰り返した。 「全部水の中に沈めばいい」  もう一度君が言ったものだから、「どうしたの」ようやく僕は問いかけた。 「そしたらみんな、呼吸できなくなって黙る」 「……ああ、それはそうかもしれない」  全国展開している有名ファーストフード店の安っぽいポテトを放り込み、僕はあいまいに賛同した。  君と僕はこれから映画を見ることになっている。話題になっている、ヒーローものだ。君が誘ってくれた。  あまり普段は見ないジャンルなのだが、テレビで話題にされているからなのか、僕は始まる前からそわそわした心地だ。  背後で笑い声が上がる。女子高生の声だ。入る前に確認した。確か店の近くに、高校がある。平日の3時半、となれば家に帰りたくない学生がたむろする場となるのだろう。  なるほど、君は彼女らにいら立っているのか。  そんなことを思いながら、僕は“水の中に沈む”世界を想像しはじめる。  頭上にあるのは揺れる水面。光がゆらゆらと揺れながら届く。  テーブルにいる女子高生は、みなふくれっ面で黙っている。  子供はぷかぷかと息を吐いて遊び、親に注意される。  君の長い髪はふわふわと水中に漂う。  その横を海の生物が――
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