帰郷

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僕が高校生の頃、漫才ブームが到来し、世の中がお笑い一色に染まった時期があった。 この頃の僕は、自分もお笑い芸人になって目立ちたいと深い考えもなく、ただ漠然と考えていた。 高校3年生の頃、高校卒業後の進路について大学に進学しようか就職しようか、なかなか結論が出ない状態が続き、僕はとても悩んでいた時期があった。 そんな頃テレビで、あるお笑い芸人が東京に上京して、お笑い芸人を目指す姿が放映され、その苦労話が僕の揺れる気持ちを後押しすることになった。 僕も、やればできるのではないかと錯覚した時期だ。 今となっては、錯覚したという表現が、最も適切だと思う。 僕は、お笑い芸人を目指して東京に上京したいという思いを両親に話すと、予想通り猛反対された。 特に、父からは激怒された。 両親としては、きちんとした会社に就職して、安定した収入を得てもらいたいと思うのは、当然のことだと思う。 でも、まだ若かった僕は、父から、 「お笑い芸人になんて、なれるわけない!」 と言われると、 「そんなこと、やってみなきゃわからないだろう!」 と反抗していた。 父が僕に、もっと落ち着いて話をして説得してくれたら、僕の考えも変わったかもしれないけど、このようにお互いにけんか腰になったら後に引けなくなるものだ。 僕は、両親と大喧嘩して実家を飛び出してしまった。 実家を飛び出すとき、父から、 「二度と帰ってくるな!」 と捨て台詞を言われた。 若かった僕は、東京に上京してから、 (二度と実家になんて帰るもんか!) と心に決めていた。
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