時が過ぎればヒモ勇者

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時が過ぎればヒモ勇者

 気がつけば半月が立っていた。家でゲームをする元コスプレ男は日中ゲーム位しかする事が無かった。住民票も無ければ戸籍謄本も無い。有るのは鎧とパーティで使えそうなビックリな剣だけである。 「勇!アンタ仕事もしてないんだから、たまには家事でも手伝ってよ!!あたしだって休日位出かけたいんだから!!」  勇者に名は無かった。自分の事を勇者と名乗るばかりで名前を忘れたのか元々無いのか何時しかあだ名の如くそう呼ぶようになっていた。名前の件に関しては私にも思う所は有ったが本人が気にした風も無かった為今に至る。ちなみに私はと言うと。 「フザケルな!もしそんな事をしている間にまた魔物が襲ってきたらどうするというのだ!そんな浅はかだから男も出来んのだコンビニ!!」  私の名前は何時しかコンビニになっていた。ちなみに私には”東村 のばら(ひがしむらのばら)”と言う割と気に入っている名前が有るのだが、コスプレ男からヒモ男に昇格(ジョブチェンジ)した勇者は一度も呼んでくれた事は無い。  何故コンビニになったかと言うと、晩御飯を買って帰る度に”コンビニのやつよ”と買ってきた商品をイチイチ美味しいだのと言うヒモ男に言っていると、どういう経緯と思考でそう思ったのか突然言って来た。 「コンビニ!素晴らしい文明だ!恐らく俺達の世界に有れば間違いなく世界一の繁盛店になるだろう!そんなコンビニを使いこなしている、そなたこそコンビニマスターの称号にふさわしい!!」  つまりは勇者の勇に、コンビニマスターのコンビニと言う、二人とも安直で雑なあだ名のまま呼び合っているうちにそれが定着してしまったのである。しかし問題はこのヒモ男が外でもこのあだ名で呼ぶ事である。  所構わずあだ名を呼ぶため、何度も恥ずかしい目に合い最近はあまり勇を連れ出さなくなっていた。
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