清涼院流水インパーフェクトスコア

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Part1 不完全な二十年 Imperfect score ――― デビュー十周年から十年が経ちました。あのとき、インタビューの最後で、「今までの十年は模索だったので、次の十年は模索の結果を実行していく十年」と仰っていたのですが、こうして十年経ってみるといかがでしたか。 清涼院 まったく同じ心境ですね。この二十年は模索の二十年だったので、それを今後発揮していきたいという感じです。ただし十年前に言ったことも嘘ではなくて、僕は常にそういうスタンスなんです。完成したら発揮するんでしょうけど、未完成だと思っているので、やっぱり模索が続いているわけです。逆に言うと、十年前から変わらず模索できている自分にちょっと嬉しくなりましたね。安定してないというのは僕にとっていいことですから。それは未熟さでもあるんですけど、普通であれば型もできあがって安定期に入ると思うんです。 ――― いまだ発展途上にある、ということですね。それは英語という新しいフィールドに出たせいもあるんでしょうが、書かれる作品のみについてでも、模索は続いているんですよね。 清涼院 もちろん、そうです。この十年は例の歴史大説との格闘がほぼ模索だったんですよ。二〇〇九年から取り組み始めたので、十年のうちの七年ですから。 (中略) ――― 十六年前、初めて流水さんにお会いしたとき、作中にいろんな人生哲学が出てきますね、という話をしたんですが、その話を聞くと、あの頃の作品から、最近の英語方面の活動まで、一本の筋が通っている感じがします。 清涼院 そこはぶれていないというか、本質は変わらないと思います。僕は今、歴史大説を書いてますけど、JDCもミステリ版の歴史小説として書いているんですよ。それはトップランもそうですし、とくまシリーズは三部作で終わりましたけど、もし続けていたら歴史小説っぽくなったと思います。その世界観の中で、歴史として僕は書いちゃうんですよ。だから今、歴史物をやるのは必然ですね。 ――― 確かにそうですね。 清涼院 JDCの中でも、松尾芭蕉であったり源氏物語のような小ネタをちょくちょく入れたのは歴史に惹かれていたからなんですね。歴史とミステリとの融合を自分なりにやってみたかったんですけど、それはある程度やったので、より純化した歴史大説の方に引き寄せられた感じですね。
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