猫の街

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 夜。  葬儀を終えた人たちが酒場に集まってきた。  口々におばあさんの思い出話しを私にも聞かせてくれる。  親に怒られて泣いていると優しく頭を撫でてくれた話。  誕生日にサプライズパーティーをしてひどく驚かれた話。  人の家に子供が産まれた時、自分のことのように喜んでくれた話。  自分の子供が孫を生んだ時、喜びすぎて腰を抜かしてしまった話。  先に亡くなったというご主人の話。  その日から、おばあさんの日課が始まったという話。  そうして話すことがまた弔いになるんだよ。  そう言って、次々にわたしのコップにぶどう酒を注いでくれた。 「そういえば、おばあさんのお家では猫は飼わなかったんですか?」  ややお酒の回った頭に、そんな疑問がわいた。  いや、それほどの猫好きなのだから街中の猫がおばあさんの猫だったという事なのかもしれない。  だが。 「飼ってるわよ。真っ白くて耳の先が茶色い雌のペルシャ」  いつの間に居たのか、宿の娘さんが隣に座っていた。 「飼ってたんですか!!それなのに餌をあげて歩いてたんですか」 「そうね、面倒見がいいっていうか人懐っこいのよ」  まるで猫みたいね。  と言って、わたしのコップにお酒を注いだ。  人懐っこいのは皆さんも同じですけどね、そう思ったが口に出すのはやめておいた。  おばあさんの思い出話はまだまだ続くようだったが、これ以上お酒が入ると酔いつぶれてしまう。  明日は早いので。  そう断りを入れてわたしは部屋に戻ることにした。
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