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3章 ノラネコ ビジネス 「出前 ねこ」
彼は長年イエネコであったために人とネコを見る目がノラよりあった。まず、元イエネコを見つけ、ノラとしての生き方を聞いた。大体の元イエネコは同じ境遇になったものに同情的であったため、何かしらの生きる術を教えてくれる。信用できる人間は誰か、ノラの縄張りやノラの集会所、この町のボスネコは誰なのか。彼らはそれらを情報料として餌を要求することや、餌取りの協力を求めた。そうやっていくうちに、この町でのノラネコ デビューとしてのあいさつ回りを済ませた彼は、度々人間と暮らしているというネコと会い今のビジネスを思い付いたという。
彼のビジネス 「出前 ねこ」というらしい。ノラネコからイエネコに成り上がりたいネコ、時々でいいから人間を利用して食料や寝床を手に入れたいネコ、それから縄張り争いで負けて居場所をなくしたネコなどなど。イエネコ時代に培ってきた人間に対しての愛想の振り撒き方を指導してネコが好きな人間のところへ行かせるというもので、成功した場合は餌の一部やまだネコを飼えそうな余裕のあるか家かどうか等の情報提供で成立しているらしい。彼はまたこのビジネスの重要性を教えてくれた。
「ノラネコの食料は限られていてそれが縄張り問題に直結しています。弱いものは飢えに苦しみ、ほかの生き物から攻撃され死んでいきます。私は喧嘩は強くないので縄張り争いに巻き込まれれば間違いなく負けます。でも生きていたいので生きる手段を探した。それがこのビジネスです。はじめたばかりの頃は、相手になめられて報酬を踏み倒す輩も多かったです。しかし今はボスネコを用心棒にしているのでその心配もない。ボスネコも、楽してご飯や縄張りの情報も手に入るからボスネコも満足している。また、ノラネコが増えすぎると悪い人間がネコを捕まえて捕まえていくのでノラ全体が身の危険が増える。でも、こうやってイエネコになってノラネコの数が増えすぎないように調整することもできる。ネコが町の全体数として増えても、イエネコが増える分には命が狙われない。とても重要な役割をこのビジネスはになっています。」
このノラネコさんは人間みたいな狡猾さとやさしさを持っている、そんなことを思っていた。この後、僕も彼からイエネコになるべく指導を受けて最近念願のイエネコになれた。最近好きな言葉は、飼い主に言われる「おかえり」である。
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