彼女は●●●●

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「ただいま」  誰もいない玄関に小さく呟いた。  だが、家の扉を開いた瞬間、何かおかしな雰囲気を感じ取っていた。簡単にひとことでいえば、何かの気配を感じたのだ。  今、両親は家にいない。  物音を立てないように気をつけながら、黒内浩太(くろうちこうた)は自宅のフローリングを踏んだ。そのまま、気配のするリビングを目指す。  リビングへの扉をゆっくりと開き、まずはソファやテーブル、テレビなどが並ぶ空間に目をやった。そこに異質な存在は見受けられなかった。  そして次に、母親の仕事場ともいえるキッチンを確認する。その瞬間、浩太は固まった。頭も身体も機能がフリーズしたようだった。  ひとことでいうと、そこに人がいた。まずそれだけでもかなりの恐怖だった。  なのになのに――その人物は、流し台の上にしゃがみ込むようにして乗っかっていた。しかも――あろうことか、年頃の女の子だった。  そのまま浩太は五秒間くらい、固まって彼女を見つめていたと思う。やがて、不法侵入者の彼女のほうが、浩太の存在に気づいた。 「ふぇっ? あっ――へ? にぎゃああぁぁ――」  浩太に気づいた彼女は、目を真ん丸に見開き、そして哀れな悲鳴のフェードアウトとともに、流しの上から姿を消した。  派手に転がり落ちたのだ。ドジっ子属性? そのあたりから、この侵入者への恐怖心はだんだんと消えつつあった。  浩太は台所の彼女の元へ歩いた。
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