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「名前はなんていうんだ?」
「特にありませんが――人間の姿として与えられている名前は、『コーカ』といいます」
コーカ。こうか。まあ、ありそうな名前だが。
まあ、いい。まあ、いいよ。それはいい。そんなことよりもだ。最初の頃に、聞き捨てならない台詞があったのを浩太は思い出した。
「仮に信じるとして、さっき安定して食料が集まるとかいってたよな? それだとまるで、いつもうちの残飯を食ってるように聞こえるよな?」
おそるおそる訊きながら、心の中では敗色が瞬く間に広がっていた。
「はいっ! もちろん! だってわたしは、この家に住み着いているゴ(以下自主規制)なので」
キラリーン、という効果音が入りそうな眩しさで、コーカは指で作ったVサインを瞳にかざした。もちろん、Vの真ん中から瞳が覗いているポーズだ。
「ふざけるなぁっ」
思ったとおりだった。
浩太は反射的に、テーブルの上の新聞紙を手に取り、そして丸めて彼女に降り下ろしていた。
ばちん、とコーカの頭が鳴った。
「にぎゃああぁっ! なにするですかあっ!」
その慄きかたに、浩太のほうが少し引いた。
「新聞で叩くのはダメですよぉ! 内蔵が飛び出したらどうするですかっ!」
頭に両手を乗せたまま、コーカが涙目になって訴えてきた。その剣幕と、実際にそうなったときの映像が頭をよぎり、浩太は降り下ろす手を止めた。
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