彼女は●●●●

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「名前はなんていうんだ?」 「特にありませんが――人間の姿として与えられている名前は、『コーカ』といいます」  コーカ。こうか。まあ、ありそうな名前だが。  まあ、いい。まあ、いいよ。それはいい。そんなことよりもだ。最初の頃に、聞き捨てならない台詞があったのを浩太は思い出した。 「仮に信じるとして、さっき安定して食料が集まるとかいってたよな? それだとまるで、いつもうちの残飯を食ってるように聞こえるよな?」  おそるおそる訊きながら、心の中では敗色が瞬く間に広がっていた。 「はいっ! もちろん! だってわたしは、この家に住み着いているゴ(以下自主規制)なので」  キラリーン、という効果音が入りそうな眩しさで、コーカは指で作ったVサインを瞳にかざした。もちろん、Vの真ん中から瞳が覗いているポーズだ。 「ふざけるなぁっ」  思ったとおりだった。  浩太は反射的に、テーブルの上の新聞紙を手に取り、そして丸めて彼女に降り下ろしていた。  ばちん、とコーカの頭が鳴った。 「にぎゃああぁっ! なにするですかあっ!」  その慄きかたに、浩太のほうが少し引いた。 「新聞で叩くのはダメですよぉ! 内蔵が飛び出したらどうするですかっ!」  頭に両手を乗せたまま、コーカが涙目になって訴えてきた。その剣幕と、実際にそうなったときの映像が頭をよぎり、浩太は降り下ろす手を止めた。
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