0人が本棚に入れています
本棚に追加
「おーい、コーカ」
返事がない。
「おーい」
そこでふと思う。
「コーカ。大丈夫か?」
コーカは、ゴ(以下自主規制)なのだ。普通、普段、風呂に入ったりするはずもない。だから、熱湯に耐性がないのではないか。それは人間の姿をしていても同じなのではないか――。
「コーカ。開けるからな」
浩太はおそるおそる、扉を開いてみた。
「ふえぇ……この匂い……ダメですぅ」
浴槽の中に、目をぐるぐると回して、ぐったりしているコーカがいた。
特徴の触覚のような髪の毛――というか触覚?――が、だらんと力なく垂れ下がっている。
鼻をひくつかせてみて、ようやくわかった。カビ取り洗浄剤の臭いだ。
昨日、入浴後に念入りに風呂掃除をしたこともあり、その匂いが僅かだが浴槽に残っていた。熱湯ではなくそっちにやられたらしい。
浩太は、コーカを抱きかかえて外に引っ張り出した。もちろんバスタオルで身体は隠した。
「人間の身体で助かりましたよぉ……。本来の姿だったら、死んでたかもしれないですぅ」
「まったく。死んだかと思って焦ったぞ――」
って、なんで俺はゴ(以下自主規制)の身体の心配なんてしてんだよ――。
なんか急に虚しくなる浩太だった。
最初のコメントを投稿しよう!