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俺はたまに夢を見る。
見たことも、行ったことも、聞いたことも無い。そんなような世界の夢だ。
其処には誰もが一度は憧れるであろう、魔法やら妖精やらがある。
その夢で俺は何をするでもなく只々、景色を眺めているだけの夢。
でも凄く不思議で、凄く幻想的で、そして凄く憧れる景色が其処には広がっている。
夢の中の俺は俺の意思など関係なく、いつも同じような道を通り、同じような景色を流す。
そしていつも大きな木の下まで行くと、今まで観ていた景色が歪んで消え去り、そして現実へと戻されてしまう。
夢にはいろんな意味があると言うが、俺の見る夢に意味なんてあるのだろうか、といつも思う。
今日もその夢を観ている。景色を眺めて、どうかあの大きな木の下まで行かないでくれと願いながら。どうかいつまでもこの景色を眺めさせてくれと願いながら。
「貴方はどんな力が欲しいですか?」
は?
小さく、細くではあるが、声が聞こえた。
いつもはこんな声なんてしない。
「貴方はどんな力が欲しいですか?」
まただ。
今度ははっきりと力強く、訴えかけるかのような声だった。
すると声はこう続けた。
「皆んなを守る力?それとも皆んなを助ける力?それとも皆んなを支える力?」
そんな声を聞いてる間にも景色はどんどん流れて行って、いつもの大きな木の下についてしまう。
「そうだな。もしも次、また質問してくれるならそれまでに考えておくよ。」
世界は歪んで溶けて消え去っていき、現実の朝がやってくる。
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