第1章 ゆめ

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俺はたまに夢を見る。 見たことも、行ったことも、聞いたことも無い。そんなような世界の夢だ。 其処には誰もが一度は憧れるであろう、魔法やら妖精やらがある。 その夢で俺は何をするでもなく只々、景色を眺めているだけの夢。 でも凄く不思議で、凄く幻想的で、そして凄く憧れる景色が其処には広がっている。 夢の中の俺は俺の意思など関係なく、いつも同じような道を通り、同じような景色を流す。 そしていつも大きな木の下まで行くと、今まで観ていた景色が歪んで消え去り、そして現実へと戻されてしまう。 夢にはいろんな意味があると言うが、俺の見る夢に意味なんてあるのだろうか、といつも思う。 今日もその夢を観ている。景色を眺めて、どうかあの大きな木の下まで行かないでくれと願いながら。どうかいつまでもこの景色を眺めさせてくれと願いながら。 「貴方はどんな力が欲しいですか?」 は? 小さく、細くではあるが、声が聞こえた。 いつもはこんな声なんてしない。 「貴方はどんな力が欲しいですか?」 まただ。 今度ははっきりと力強く、訴えかけるかのような声だった。 すると声はこう続けた。 「皆んなを守る力?それとも皆んなを助ける力?それとも皆んなを支える力?」 そんな声を聞いてる間にも景色はどんどん流れて行って、いつもの大きな木の下についてしまう。 「そうだな。もしも次、また質問してくれるならそれまでに考えておくよ。」 世界は歪んで溶けて消え去っていき、現実の朝がやってくる。
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