世界が滅びれば良いのに

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その日はずいぶんと平凡で代わり映えのない一日だった。 そんなフレーズの歌を何処かで聞いたことがある気がする。 きっと、あいつがよく聞いていた曲の中のどれかなのだろうが、正直興味がなかったのでよく覚えていない。 実際。今日の俺の一日はいつもと変わらないものだった。 やらなければならないことは山ほど与えられているのに、出来ることはほとんどない。 出来ることがほとんど無くても、やらなければならないことはわかっているのに、やりたいことがない。 誰かに求められたことの、八割をなんとかこなしながら、気が付けば残りの二割が四割にも六割にも増えている。 まるで、上の具材を食べている間にその下でぐずぐずに伸びてしまったうどんのようだ。 食感は最悪。味も悪いし。喉ごしも悪い。 そんなうどんの良いところを全て奪ってしまった存在。 普通に食べるよりも、量は増えているし、なにより食べることが苦痛だ。 そんなもの棄ててしまえば良いのだが、それができれば苦労はしないし、俺の世界は今より少し幸福なものになっていたことだろう。 昔、小学生の頃給食の時間に先生に言われた言葉と同じだ。 とうの昔に給食の時間が終わっていても、全部食べきるまで休み時間にはならない。 この国において、残して終わることは、悪そのものなのだ。 あれから倍近い月日が流れても、俺は給食を残し続けていた。 今も昔も変わらない。終わらせたい。楽になりたい一心で、吐きそうになりながら、泣き出しそうなりながら、なんとか詰め込んで終らせる。 例え喉を通らなくても、口にさえ含んでしまえばセーフだと言い張って、今日もまた叱られている。 そんな一日の終わりにはいつも考える。 俺はいったいなんのために生きているのだろうと。 生きるためにこの苦しみを耐えているのか、この苦しみを耐えるために生きているのか、わからなくなってしまうそんな日々に今日も想いを馳せる。 世界が滅びれば良いのにと。
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