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エゴンが軽騎兵を率いて川を渡ると、対岸で待機していた斥候が2騎案内に立った。
「敵が見える位置までご案内します」
エゴンが馬を止めて振り返ると川の中で軽騎兵達が怖々と馬を進めているのが見える。
遠くから白波に見えたのは大きな石に流れが当たっているためで流速はあるが幸い浅いので渡るのに特別な技術を必要としない。
川底は固いので、100騎程度渡河したところで荒れる虞はなさそうだ。
「おう」
後続の心配はしなくてもよさそうなので前進を開始した。
進むのは獣道。足許には辛うじて踏み固めたような跡があるが、枝が張り出し放題なので間隔をとらないと自分が避けた枝がしなってすぐ後ろの者を襲いかねない。
時々目の前に現れる木の実を素早く摘みながら前の馬に続く。
「陽が落ちたな」
空には薄明かりが残っていても山の中には暗さが増してくる。
そのうちにエゴンは顔や身体に当たる枝や葉が気にならなくなってきた。
「ここです」
小高い丘の上には斥候が4騎待っていた。
だいぶ森の中は薄暗くなっていたが、木の間から道路や川岸の様子が確認できる。
「報告します。敵はこの方向、川岸に沿って宿営準備中と思われ、炊煙らしきものを確認。先程騎兵及び馬車を含む100名ほどが北進したほか道路に行き来はありません」
北進した敵というのは恐らくこの戦いの元凶を含む主力であろう。
この地形では路外を馬で追尾するのは不可能だし、これから奇襲を仕掛けようとしているのに明るいうちから路上に姿を現すわけにはいかない。どこまで何をしに退ったかというのは気になるところではあるが、いくつか想像はつく。
「おい、今から殿下のところに100名の北進を知らせろ。あわせてこれより川岸の襲撃を開始すると報告せい」
「はっ、直ちに」
まあ、殿下なら自分よりも的確に判断されるであろう。
主力を追うという魅力的な選択が目の前にあるが、夜戦慣れしていない100騎程度の戦力を分割するのは愚かである。目の前に屯する敵は数だけは10倍以上であるから。
「暗くなる前に襲撃を掛ける。前の方におるものはとにかく突進せえ。中の者は敵が天幕から出て来たところを斬れ、後ろの者は敵が逃げる方向に回り込め」
命令は口頭で後ろに伝えられ、すぐに後方から了解の合図が届いた。
「行くぞ、我に続け!」
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