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「そうか、では伝えるが、エリカは山の麓の村の村長宅で指揮をとっている」 「はい」 「各隊の行李には追及するように指示を出した。館に残っていた婦人達も一緒に前進中だ」 「わかりました。段列についてもここの処理が終わり次第推進します」 「それでは先に・・・あ、そうそう」 「はい」 「エリカを助けてくれて礼を言う」 「は?」 「同じ服を着た小さな淑女を派遣してくれただろう?」 エルフリーデにはハロルドの言葉の意味を理解しかねたが、同じ服を着た少女なら心当たりがあった。 「リーナ?」 「そうそう、リーナと言ったな。神官が魔術を使うのを見たのは初めてだ」 「いえ、神官が使うのは魔術ではありませんわ」 「いやいや、神官の技を間違えて魔術と言ったのではなくて、その子が使ったのが魔術なのだ。今は魔術師長としてエリカの傍にいるよ」 伝える事は伝えた、とハロルドは片手を上げると踵を返した。 呆気にとられたエルフリーデはハロルドに礼をするのを忘れたが、ハロルドは頓着せずに乗馬すると道路に出て東進して行った。 「魔術?」  リーナには神官の技を教えていないので何も出来ない神官と言われるなら分かる。 もともと神官は神の言葉を聞き、神の力を願うのが役割であり、だからこそエルフリーデのように余力で他の役職を兼ねることが出来る。 しかし魔術師となると錬金術師のような山師は別として、術を発動するために自らの生命力を対価として削るので短命であるし、身分的にも下層に位置するので神官と違って余程力がない限り国の役職に就くということはあり得ない。 「まさかね」 エルフリーデの瞼にちょこちょこと歩み寄ってにぱっと笑うリーナの姿が浮かんだ。 多分リーナがエリカ様の前で神官の真似事をして、それをハロルド殿下が魔術と見誤ったのだろう、エルフリーデはそう解釈して落ち着いた。 「さあ、みんな」  エルフリーデは金の王錫を手に取った。 これは王都にいる時にエリカから「あげる」と軽く手渡されたので、王女殿下から下賜された物だというような仰々しい思い入れはなかったが、手にするだけで周囲から注目を浴びる。 「神に祈りましょう」 王錫を掲げて皆の祈りを聞いていると、周囲に金色の光が満ちてくるのを感じた。
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