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「そうではない。我が入れば結界が壊れるからその女は更に魔力を使って結界を作ろうとするだろう。我を弾く結界などその女には作れぬから朝までもつ命がすぐなくなるぞ」 ヨランダは空中に長い髪を漂わせながら真剣な目付きで言った。 「朝まで?」 「そうだ。未熟故、全ての魔力を十分に形に出来ないままエリカに注ごうとしおった。おかげでこの屋敷の周囲は魔力の欠片で溢れておるわ。このままにしておけば、その女はもう目を覚ますことはないだろう」 「そうなのか」 「放っておいても良いのだが、その女の魔族狩りは我の勢力拡大に役に立つのでな。生かしておいた方がお主の利益とも一致するであろう?」 「自分は狩られないという自信があるんだ」 「当然。そもそもその女の魔力は我と同質のもの。その女がばら巻いた魔力を集め、我の魔力を足してより強力な魔術を出せるように加工をしたものを渡しても良いぞ」 「それを渡せば目覚めると?」 「より強力な魔術師としてな」 「どうやって渡すの?」 「我が結界に入るわけには行かぬので、お主に魔力の受け渡しをしてもらう」 「僕に出来るのか?」 「できる」 「どのように?」 「今からお主の舌に魔力を載せる。それを女の舌に溶け込ませるようにすればよい」 「舌を合わせるって事?」 「簡単であろ?」 方法としては簡単かもしれないが、エリカ相手ならともかく今日会ったばかりの幼い少女に行うのには抵抗があった。 「他に方法は?」 「ある」 「どんな?」 「普通に交尾をするという方法でも良いぞ」 「交尾って・・・」 それこそ冗談ではない。 「舌でいいよ」 ヨランダはつまらなそうにフンと鼻を鳴らすと短く呪文を唱えた。 「これでお主の舌は魔力で満たされた」 「あ、ヨランダと口付けしなくていいのか」 「何だ、したかったのか?」 「違う」 以前にヨランダが心を読むのを見ている。何を考えているか分かっているのにそういう言い回しをするのはレオナルドが遊ばれているということだ。 「とにかく、舌と舌が触れればいいんだな」 「そうだ。魔力を注ぎ終わったならば目を覚ますよう仕組んである。それまでは中断してはならぬ。魔力がこぼれ落ちるからな」  なにか釈然としないものを感じたが、レオナルドは靴を脱いで寝台に上がった。 振り返って見るとヨランダの姿は消えている。長居は無用と言うことか・・・
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