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 エリザベスとゆっくり話せるのは今しかないかな、とハンナは思った。 ユリアーナとマーヤが「今のうちに理髪師と鍛冶に食事をさせる」と言って部屋を出て行ってしまったので、部屋には他に誰も居ない。 「あの」 ハンナの呼び掛けに、椅子にゆったりと座り外を眺めながら右手で編んだ髪を弄っていたエリザベスがゆっくりと顔を向けた。 「エリカ様が、その、少しお変わりになったのではないかと・・・」 「あら」 エリザベスは不思議そうに小首を傾げ 「私がお姉さまにとって一番近しい間柄だと思っていただけるのは嬉しいのですけれど、私にはその変わったという意味がわかりません」 「それは・・・エリカ様はもともと何でも一人でお決めになって、お側に人を置くようなことはなかったのですが」 「ああ」 エリザベスは合点がいったという顔でにっこりと微笑んで 「そういう事ですの。今まではあなただけが隣にいたのですね」 「はい、侍女という意味では他にもいましたが」 「ふふ、レオナルド様だけじゃなくてユリアーナ様やマーヤにまでエリカ様をとられちゃって寂しいですか?」 「あ、いえ、そういうことでは・・・」 「隠さなくていいですよ、私もそうですから。私も一緒に戦えるハロルドを羨ましく思っていますの」 そう言うとエリザベスは視線を外に戻した。 「あ、ハロルド」 「え?」 エリザベスの言葉に驚いて窓の外に目を遣ると、往復する馬車を縫うように近付いてくる騎士が目に入った。 「ベッティー!」 その時、ユリアーナが血相を変えて部屋に飛び込んできた。 「エリカが撃たれたって!!」 「ユリアーナ様、落ち着いて」 エリザベスは優しく諭すような声で 「ここへいらして」 「う、うん」 ユリアーナは素直にエリザベスの椅子の隣に歩み寄った。 エリザベスはユリアーナの手をそっと握り 「ご覧になって。ハロルドがゆっくりと近付いてきます」 「あ、うん」 「ね、わかるでしょ?」 「え? なに? ごめん、わからない」 「あのね、お姉さまに何かあったらハロルドが呑気にしてるなんてあり得ないから」 「そうなの?」 「ユリアーナ様には失礼な質問かも知れませんけれど、お兄様にお姉さまの軍勢が操れますかしら?」 「無理じゃない? 戦なんて初めてなんだから」
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