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「レオン、あなた銃士隊を創設するつもりでしょ? 銃は音と威力は優れているけど発射速度と命中精度は弓に劣るっていうのが常識よね」
「うん、そうだね」
「マスケットの隊列がこの人のように200歩先から正確に命中させられるようになれば、弓や弩より優位に立てると思わない?」
「もしかして、雇うつもり?」
エリカはにっこりと微笑むとマスケットの男に向き直った。
「ねぇあなた、私達に雇われる気ない? 地位と報酬は約束するわよ」
「地位と報酬?」
「地位はこれから作る銃士隊の指揮官。報酬はそうね、あなたが言うとおり私は王女だから王国内に領地を持っているわ。西の辺境伯とオットー伯爵を兼ねているからすごく広いのよ。その中から実入りの多い市を含んだ砦を中心に男爵領を作って差し上げるけどいかが?」
男爵領を下賜するというのは男爵に叙すると言う事を意味している。
「男爵!」
男爵なら領地も爵位も子孫に受け継がせる事が出来る。
ましてやこのような形で下賜される場合、領主が納める税は免除されるか優遇されるだろう。領地の運営次第では莫大な財産を手中に収める事も可能なのである。
マスケットの男が目を白黒させていると、エリカはフュンフににっこりと微笑みかけ
「で、フュンフは私と何を交渉したいって言うの?」
「え、あ、王女様が無事だったら」
「ん?」
「こちら岸にいる兵は王女様につきます。半分以上が戦闘奴隷だから、皆有利な方に付くことに異存はありません」
「そう。なら今すぐ橋を架けて」
「へ?」
「あ、そうね、フュンフに選ばせてあげる。この先ずっと奪い取られるだけの人生を送るか、試練を受けて私の直属の騎士となるか。ちなみに直属の騎士になれば活躍次第では爵位も夢ではないけれど、どうする?」
「えっと・・・」
「受けるのならば望みどおり騎士として任命してあげる。でもあなた騎士としての教養も戦闘技術も身に付けていないでしょう。だから私の直属の騎士としてそれは学ばせてあげるわ。でもね、私の直属の騎士なんてここにいる皆がなりたい地位なのよ。だからあなたがそれに相応しい事を、ここにいる皆の前で証明して見せて。明日の朝までにあなたが指揮してあなた達だけで徒橋を架けること。これが受け入れる条件よ」
「えっと、明日の朝までに歩いて渡れる橋を架ける。橋の架け方は自分で考えろって事?」
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