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「頭の回転が速いのね。そういう人好きよ。でもね考えるのはあなた一人じゃなくていいのよ」
「わかった。ならこっちからも条件がある」
「あら、なに?」
「橋を架けている間、向こう岸から攻撃させないこと」
「あははは」
エリカは突然笑い出した。それも楽しそうに
「なかなかいいセンスね、シュルツ、そう思わない?」
「左様、馬鹿ではないですな」
「うんうん、フュンフ、あなたとってもいいわ。対岸の敵は一掃してあげる。すぐに準備に掛かりなさい」
フュンフは頭を掻きながら兵の屯している場所に戻って行った。
「で、あなたは結論出た?」
「この腕を買うと」
「ええ」
「地位も報酬も悪くない。承知した」
「名前は?」
「ディルク、ディルク・イェーガー」
「私はエリカ、王女や殿下じゃなくてエリカって呼んでね。これ大事」
「エリカ?」
「うんうん、こちらはバラート公爵レオナルド、歩兵隊長シュルツ、弓兵隊長ライナー、騎兵副隊長フェリックスね」
「こんな統制のとれた軍を見たのは初めてだ」
「私の中ではこれが当たり前だけどね。フェリックス」
「はっ」
「予定の行動をとりなさい。エゴンが点けた火を大きくして、フュンフを援護しなさい」
「はっ、 騎兵、続け!」
騎兵は一斉に馬首を返した。
「シュルツ」
「はっ」
「あなたも予定の行動をとるとともに各村に巡察を派遣、夜陰に紛れて出て来た逃亡兵を狩らせなさい」
「御意」
「ライナーは交代で作業場所を警戒させなさい。この弩兵はこのまま警護で借りるわよ」
「わかりました」
「戻りましょう、レオン」
「そうだな」
「ディルク、一緒に来て」
「了解した」
エリカとレオナルドは警護兵とディルクを連れて後方へ歩き去った。
「驚いたなぁ、死ぬところだったのに自分を撃った相手を雇うなんて」
若い弩兵が呟いた。
「なんだと?」
その呟きに反応したのはライナーだった。
「どういう意味だ?」
「え? だから殿下は撃たれて、どこからかやってきた神官が傷を治して、俺達がここまで運んだんで」
「そんな報告は受けてないぞ」
「それは、王子殿下が他言するなと」
それを聞いた途端、ライナーの強烈な横蹴りが入り、若い弩兵は近くにいた弩兵を巻き添えにして転がった。
「だったら最後まで黙っておれ、馬鹿者が」
当然の酬いだな、とシュルツは思った。
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