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「それはね、近所の犬が怖くて通れなかった道を、初めておばさんが通れた時のだって。これもね、おばさんに見せるとなんでこんなの撮ってるのって怒られちゃうからしまってるんだって」
幼いながらも誇らしげに、しかし目に涙を溜めているのが可笑しく愛らしい。思わず笑ってしまう。
「これ……」
次に出てきたのは、幼い自分と。
「和人?」
縁側、木漏れ日の中で寝転がるのは、小学生の幸一と幼稚園児の和人だ。和人の小さい背中に、幸一の成長期を迎えて少しだけ男のものになりつつある腕が回されている。
「よくおじいさんの家の庭で遊ばせてもらってたよね。庭いじりさせてもらったり、夏はビニールプールを出してもらったり。疲れて昼寝させてもらうこともしょっちゅうだったね」
「なんでこれ隠してたんだろ? 別に隠さなくてもいいのに」
「いや、コウ涎垂れてるから。嫌がると思ったんだって」
え。
そう言われてよく見れば確かに、涎を垂らして熟睡している。
「ぷっ!」
自分でも爆笑してしまう間抜け面だ。幼い和人は美少年で可愛らしいが。
「ここにね、コウと俺の写真を足していってほしいって」
「え?」
「コウの宝箱にしてほしいって言ってたよ」
和人から箱を受け取る。
幸せが詰まった宝箱。確かに受け取った。
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