第一章

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「真面目に答えろ」  低い声で唸る様に言うと、和人も笑みを消した。 「正月にも言ったじゃん。面倒になったんだって」 「なんで急にそんなことになったんだよ。学校で何かあったんじゃねえの?」 「何もないよ」  ……なんだよ、やっぱ俺にも話す気はないんじゃないか。おばさんに俺にならって言ったのは、なんだったのか。 「何もないなら、学校行け。おばさん心配してるだろ」 「学校では何もないけど、学校以外に今やらなくちゃいけないことができたんだ。だから、学校には行かない」 「は?」  なんだ? 意味がわからない。つまり学校以外にやることがあるから、行っている暇がないと? 「それって、何?」 「言わないよ」 「なんでだよ。今高校生の和人にとって学校以上に大事なことなんてねえだろ」 「あるよ」 「いや、そりゃ誰だってあるけど、そうじゃなくてさ。学校に行ってからやれって。最低限自分がやるべきことをやってから、初めてそういうことってやっていいんじゃねえの?」  幸一はずっとそう思っていた。そして和人もそうだと。だからこそ勉強にも幼い時から励んできたのだと。 「はは、正論だね。わかった。明日は学校行くよ」 「……また嘘じゃねえだろうな」 「ほんとだって。朝学校まで連行してくれてもいいよ?」 「いや、そんなことはしないけど」 「コウ明日帰るだろ? 十六時には俺も学校から帰ってるから、帰る前にうちに寄ってよ」  にっこり微笑まれて、幸一にはその真意はわからなかった。この話をするのを終わらせるために言っているのか、本当に改心したのか。 「そんなわけで、もう寝よう? 学校行くなら朝早いからさ。電気消すよ」 「ん」  和人は電気を消して横になる。幸一もそれを見てからベッドの中に入った。シーツは新しく取り替えられているが、何となく和人の匂いがした気がした。
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