最終章

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「あなたたち、変わらないわねえ」  そう言ってくすくすと笑われてしまって、幸一と和人は恥ずかしくなって二人で俯いた。 「まだ完全に納得したわけじゃないけど……二人の気持ちはよくわかったわ」  その言葉に二人揃って顔を上げる。 「まったく……お母さん、とんでもないサプライズを用意してたのね」  優しく微笑んで祖母の手に再び触れた後、母は二人に手招きした。  そっと、幸一と和人を抱き寄せた。 「お互いの幸せを考えて、お互いを大切に。何かあった時は抱え込まずに、きちんと話して。私もお父さんも、あなたたちの味方になれるように努力するから」  温かい。  触れてくれる手は、これは、母の温もりだけじゃない。幸一に夜明けをつれてきてくれた、祖母の温もりも、伝わってくるようだった。  言葉の意味を少しずつ理解する。  味方になってくれる?  和人と家族になれる?  診療所を継ぐってことは、本当に、一生一緒にいられるってこと?  不安だったんだよ。和人に抱かれて、満たされて、幸せになっても、心のどこかで、不安だった。未来が見えない関係。それに若い和人を引き摺りこんだのではないかと、やはり未だに不安だったんだよ。  何から喜べばいいのだろう。この幸福感を、どうやって伝えればいい?  伝えたい。伝わって。  頼むから。  伝えて。 「おばあちゃん、ありがとう」  言い尽くせない感謝と、溢れる幸福感。そして刻一刻と迫る別れへの悲しみ。  すべてを一言に詰め込んだ。  届け――。
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