最終章

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 ――三日後、祖母は祖父の元へと旅立って行った。  意識を取り戻すことはなかったが、穏やかで、家族や友人に囲まれた、良い最期だったと言えるだろう。  その夜、母と父は自宅に帰って、和人は幸一の家に泊まることになった。明日一緒に帰って、通夜に出る予定だ。 「和人、ほんと、いろいろありがとな」  一緒にベッドに入って、暑いのにひっついていた。 「俺の方が、ありがとうだよ。おばあさんにたくさんのものを貰った」  ぎゅうぎゅうと抱き合った。 「悲しいね」  和人が耳元で言った。 「うん。悲しい」  幸一もそう返して、ますます和人を抱き締める腕に力を込めた。 「もっと、何かできたんじゃないかって、思った」  幸一も同じだった。そう、痛いくらいに思ってる。ああ言えばよかった、ああすればよかったと、後悔ばかりが浮かぶ。もらってばかりで、返すことはできなかったと思うから。 「俺ね、おばあちゃんにお願いされたんだ」 「何を?」 「コウを照らす光になること」
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