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「幸一は口が悪いけど、いい子だからよろしくねって。強いようで、いじいじすぐ下を向くから、和人ちゃんが上を向かせてあげてねって」
上を向ける。
夜明けを見つけてくれた。あなたと、和人が。
「和人、ずっと俺を好きでいてくれよ」
少し身体を離して、和人の頬を両手で包んだ。照れずに伝える。
「何、コウ。珍しいね、素直」
「俺、根は暗い奴だから」
「知ってるよ」
「ちゃんと照らせよ。離れんなよ」
一緒に、歩いて行く。今日、ここから、自分は光の中を歩いて行く。幸一は決意をする。
いつの日かあなたと再会した時、あなたがくれた光の中を、まっすぐに生きてこれたと誇れるように、二人で、歩いて行く。
きっとそれが、自分ができる一番大きなあなたへの恩返しだと思うから。
「コウこそ、俺から離れるとかいつか言い出しそう。まあ、手放す気はまったくないから覚悟しろよ」
「望むところだ」
子どもっぽく笑った和人を見て、思った。夜明けをつれてこれるのは当たり前だと。
和人は俺の、きらきら輝く光、太陽なんだから――。
「夜明けを待つこの場所で」
終
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