番外編──宝物──

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「そんなことある。元気か? そうかー、じゃあなって何?」  今何してるんだろうと考えて、勉強だろうなと思って、でもちょっとだけ繋がりたくて、電話して、声を聞いて繋がりを感じて満足して、邪魔にならないように切る。そんなことをした気がする。 「声聞いたら会いたくなるのに、話したくなるのに、ちょっとだけ話して自分が満足したら切るって酷すぎだろ」 「う、悪かったよ。受験終わるまで俺からは電話しないようにするよ」 「……絶対推薦で決めてやる」  腰に回されていた手が背中に伸び、ぎゅっと抱きしめられた。 「和人、暑い」 「うん」 「うんじゃねえって……っ」  首筋に、唇が押し当てられる。熱い唇。それから、少しの痛み。歯が立てられたのがわかる。いつもはすぐに文句を言うのだが、自分だけ繋がりたい気持ちを満たしていた罪悪感があるから、何も言わない。 「ん……っ」  でも、言わないと痛みは強くなる。ときどきこうして自分を噛んだりするのが、和人の独占欲の現れだというのはわかっている。それを満たしてやりたい気もするが、さすがにこれ以上強くなると流血ものだ。 「おま、ちょっと加減しろ……!」  そう言えば、今度は傷口を癒やすように舐められる。くすぐったくて身動ぎするが、抱きしめる腕はさらに力が込められる。  求められている。和人に会ったらきっとするのはわかっていたが、こんなに性急に求められるとは。 「え、すぐすんのか……?」 「んー……夜まで我慢する。聞きたいこともあるし」  名残惜しそうに唇が離れていく。  ……この、熱を持ち始めたものはどうしろと?
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