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「はあ……お前って自分だけが若くて俺がもう性欲なくなった老人だとでも思ってるのかね」
「何の話?」
「いいよ。それより、聞きたいことって何だよ?」
ソファに座って、熱を落ち着かせつつ尋ねると、和人も隣に座った。
「うん。おばあちゃんの持ち物の中にさ、紙の箱なかった? 和紙が貼ってあるの。おばさんに聞いたんだけどなかったって言ってたから、病院に忘れてるかもしれないと思って」
「ああ、あったよ。忘れ物で。母さん、俺が持ってていいって言ってたから、今あるよ」
和人はほっとしたような顔をする。
「よかった。気になってたから。おばあちゃんの宝箱」
「宝箱?」
「うん。そうだよ。中見なかった?」
「ちらっとだけ。おじいちゃんからの手紙が入ってた」
「そうそう。手紙とか、写真も入ってるよ」
「お前なんで詳しいんだよ」
「見せてもらったもん」
本当に、祖母と和人は仲良くしていた。最期の時、どこか遠慮して接してしまう母や自分と違って、目一杯心配して目一杯惜しんでくれる和人と過ごせたことは、祖母にとって幸せだったかもしれない。
「それ、ちょっと見せてもらっていい?」
「うーん。なんかこう、俺がほいほい箱開けて見ちまうのがなんだか悪い気がして」
「大丈夫だよ。おばあちゃんは、宝箱をコウに渡してって言ってたから。コウに開けてほしかったんだ」
「それも頼まれた?」
「うん」
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