番外編──宝物──

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 ふうっと溜息を吐く。もちろん、嫌なわけじゃない。だけど母や自分にはいろんなことを話しにくかったのではないだろうかと、少し寂しく思ったのだ。だから和人に託すことが多くなったのではないかと。  棚に置いてあった箱を取り出して、和人に手渡した。和人はそれを膝の上に置いて、そっと蓋を開けた。上の方に入っていた手紙を、そっと取り出してテーブルの上に置いた。その下には、和人の言うように写真が入っていた。 「……誰?」  白黒の、ずいぶん古い写真だ。しかし、写っているのは誰かわからない男性だ。というのも、舞台か何かの写真のようで、男だが化粧をしている。なんだか見覚えがある気もするが。 「何言ってんだよ、コウ。おじいさんじゃん」 「は?」 「大学で演劇をやった時のだって。ここで一目惚れしたんだって、おばあさん言ってたよ。文化祭か何かに、おばあさん友達と忍び込んだんだって」  確かに、若いときの祖父……と言われれば面影があるような。そもそも、祖父や祖母の若いときの写真なんてあまり見る機会もなかったからわからない。 「これ見せると、おじいさん照れちゃって捨てろって言うから、ここに隠しておいたんだって」  次に出てきたのは、四,五歳にみえる少女の写真だった。泣きべそをかきながら、多分家のドアの前で仁王立ちしている。
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