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「あれ? もう一枚あんじゃん」
「あーそれは……」
ヒマワリを持って笑顔で写っているのは、和人だ。幼い時ではない。ごく最近の。
「明るい気分になるといいなあと思って、小さいヒマワリの花束をおばあさんに持って行ったんだよ。そしたら持たされて撮られたっていう」
「裏になんか書いてある」
「え? それは知らない」
〝幸一の旦那さん?〟
「うわー!!」
「ぎゃー!!!」
二人で同時に声を上げて、二人で赤面した。
「ハートマークが付いてるよ! コウ!」
「これは誰にも見せらんねえ!」
〝一度、サプライズって言うのをやってみたいって言ってたんだ〟という父の言葉を思い出した。
確かに、これが書いてあるのなら、和人が幸一の両親の前で告白した後でなければサプライズにならない。
和人に託したのはそういうわけか。
顔を赤くしたまま、二人で顔を見合わせて笑った。
ヒマワリを持つ、和人の少し照れた顔を見る。そこから光が溢れているかのように、眩しく感じる。
――俺の宝物。
幸一はそっと、祖母の宝箱を胸に抱いた。これからきっと、中身は増えていくのだろう。祖母が詰めてくれていた優しく温かい空気は、消えるのではなくそこから溢れて、包んでくれるのだと思った。
番外編「宝箱」 終
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