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「酔ってねえ! 俺は本気でお前に呆れてんだ!」
「……どういうキャラなの、幸一君」
「面倒なことなんてこの先いくらでもあるっつーのに、学生の分際で学校から逃げてどうすんだ! 逃げ癖がついたら将来やってけねえぞ!」
息巻く幸一に、穏やかな幸一の父も、さすがに止めに入る。
「幸一、夜勤明けで日本酒なんて飲むから酔ってるんだろ。酒強くないんだから。ほら、手を離しなさい」
優しく手を包まれて、少しだけ冷静になって胸倉を掴む手を緩めた。
「和人君が本当は何を思って学校に行かないのか、そんなことはわからないだろ。一方的に責めるのは間違っていると思うよ」
父に言われ、酒がまわってぐるぐるする頭で反省する。確かにその通りだ。今和人が言ったことが本心とは限らない。
謝ろうと思って和人を見た時、和人が下を向き、ぼそりと呟くのが聞こえた。
「……俺から逃げたのはコウの方だろ」
それが聞こえたのは、幸一だけだったらしい。なんのことだと聞き返そうとしたら、和人はぱっと顔を上げて笑った。
「そうだね! 逃げてばかりじゃ駄目だよねえ」
「お、おう?」
三学期からは学校行くよと、和人は笑って言った。
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