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風がひとしきり強く吹いて、髪がふわふわと舞う。
お気に入りのシャンプーの薔薇の香りが私にまとわりついた。
こんなときに弱さを見せるこの人を、本当にずるいと思う。そして強がっているときより、もっと愛していると思う。
私はもう、そんな自分の心をうまく扱えなくなっていた。
「里華、大丈夫か」
優しく伸ばされたこの手を取って彼の肩にすがれば、私はまた戻ることができる。
あの、苦しいけれど満ち足りた愛の中に。身体が軋むほどきつく、また抱きしめてもらえる。
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