嵐が来る

11/21
前へ
/21ページ
次へ
風がひとしきり強く吹いて、髪がふわふわと舞う。 お気に入りのシャンプーの薔薇の香りが私にまとわりついた。 こんなときに弱さを見せるこの人を、本当にずるいと思う。そして強がっているときより、もっと愛していると思う。 私はもう、そんな自分の心をうまく扱えなくなっていた。 「里華、大丈夫か」 優しく伸ばされたこの手を取って彼の肩にすがれば、私はまた戻ることができる。 あの、苦しいけれど満ち足りた愛の中に。身体が軋むほどきつく、また抱きしめてもらえる。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加