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「ごめんね、あっちゃん」
私は彼の肩をすり抜けて歩き出した。歩道橋の手すりに軽く手をかけながら不意に思う。
今ここで、下を走っている車に身を投げたら、あなたにとって一番になれるだろうか。
私はあなたの、忘れられない人になれるだろうか。
何気なく触れた手すりは、思いのほか熱を持っていた。
そしてその熱気は指先から私の身体の中を、ぐるぐると回りはじめる。
ばりばりばり、と遠くで雷鳴が響いた。
たぶん私は何をしたって、一番にはなれない。
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